SNS上で誰でも情報発信ができるようになった昨今、消費者のリアルな意見を企業活動に取り入れるために、ソーシャルリスニングという手法が取られています。
ソーシャルリスニングとは、SNSや掲示板などから自社の商品・サービスに関連する投稿を収集・分析し、企業活動に役立てることです。
本記事ではソーシャルリスニングの定義や方法、成功した企業の事例を紹介します。
ソーシャルリスニングを取り入れ、商品開発や潜在的なリスクの発見など、企業活動に生かしたい方はぜひ参考にしてください。
ソーシャルリスニングとは
ソーシャルリスニング(Social Listening)とは、SNSや掲示板などで発信された情報を収集・分析し、企業活動に活用する手法です。
選定したキーワードに基づくあらゆる投稿を収集・分析できるため、以下のような点で役立ちます。
- 商品やサービスの改善
- プロモーションの成果測定
- 潜在的なリスクの発見
- 消費者や業界の動向の把握
ソーシャルリスニングはスマートフォンが普及し、SNSが情報収集やコミュニケーションの手段として定着したことから注目されるようになりました。
総務省の調査では、SNSを利用している人は68.5%を超えており、年齢が若くなるほどその傾向が強く、20~29歳では75.5%にのぼります。(1*)
また、従来消費者の声を聴く方法といえばアンケート調査が主流でした。
アンケート調査では、企業側の反応が気になり正直な意見が書きにくかったり、質問に回答する形式であるため、得られる情報が限定されたりする傾向があります。
ソーシャルリスニングは、アンケート調査のようなフィルターや制限がなく、消費者の率直な意見が聴ける点がメリットです。
ソーシャルリスニングの方法
ソーシャルリスニングは、以下のような手順で行われるのが一般的です。
- 目的を明確にする
- 調査対象のメディアを選定する
- キーワードを選定する
- データを収集・分析する
- 次の企業活動に生かす
一つずつ解説します。
1.目的を明確にする
ソーシャルリスニングを「何のために行うのか」という目的を明確に決めておきましょう。
例えば、「新商品やキャンペーンの反応を知りたい」「ブランドイメージを知りたい」などの目的が考えられます。
2.調査対象のメディアを選定する
ソーシャルリスニングの対象となるのは、以下のようなSNSや掲示板、口コミサイトです。
- YouTube
- LINE
- TikTok
- 5ちゃんねる
- Yahoo!知恵袋
- 教えてgoo
- ブログ
それぞれのメディアによって利用者層や発信方法が異なるため、ソーシャルリスニングをしても得られる情報が異なります。
そのメディアにほしい情報が投稿されているか、投稿が信頼できるか、タイムリーな情報が得られるかを調べてから決定しましょう。
3.キーワードを選定する
ほしい情報を得られそうなキーワードを試しにいくつか出してみて、実際に各メディアで検索してみましょう。
考えられるキーワード例は、以下のとおりです。
- 商品名・サービス名
- 会社名
- 業界全体をあらわす名称
- 競合の名称
また、メインのキーワードとサブキーワードを組み合わせると、より精度の高い情報が得られます。
例えばあるサービスのカスタマーサポートの対応についての意見を知りたいなら、「サービス名」+「サポート」「窓口」「対応」などのサブキーワードを含めて考えましょう。
4.データを収集・分析する
選定したキーワードをもとに、データを収集します。
手動でキーワードを打ち込み、各メディアで検索することも可能ですが、有料ツールを使えば簡単な操作でデータが収集でき、深い分析が可能です。
収集したデータは、以下の3つの観点で分析します。
- 数値分析
- 投稿・アカウント分析
- セグメント分析
数値分析では、投稿数やリーチ・インプレッション数を確認します。
投稿は内容によって「ポジティブ」「ネガティブ」「ニュートラル」の割合を算出すると、消費者の意見を把握しやすいでしょう。
投稿・アカウント分析では、投稿で頻出しているキーワードを抽出したり、影響力のあるアカウントを割り出し、動向を分析したりします。
セグメント分析では、数値分析と投稿・アカウント分析で得た情報をさらに分類します。
投稿者の商品・サービスに対する関心の度合いや、投稿のきっかけになった情報源などで分類するとよいでしょう。
5.次の企業活動に生かす
分析で得た情報を、商品・サービスの開発や改善、プロモーション方法、顧客対応など企業活動のさまざまな面で活用します。
ソーシャルリスニングの成功事例を紹介
ソーシャルリスニングを導入し、売り上げを伸ばしたり、企業イメージを向上できたりした事例を2つ紹介します。
カゴメ株式会社
カゴメ株式会社では、2014年からソーシャルリスニングを行っており、SNSで話題になっているレシピを商談資料に取り入れ、店頭に反映してもらい売上に貢献しています。
またカゴメ株式会社では、新卒採用の際にエントリーシート選考で落ちた学生にお礼状と自社商品をプレゼントする企画を以前から行っていました。
2018年に突然SNSで話題になり、ソーシャルリスニングをしていたマーケティング担当者が気づき、プレゼント企画の担当者に伝えたところ、プレゼント企画の継続が決まったということがあるそうです。(2*)
株式会社ロフト・株式会社ハンズ
ソーシャルリスニングで消費者のニーズを拾い上げ、迅速な対応で注目を集めたのが株式会社ロフトや株式会社ハンズの「グリーンノート」販売です。
2019年6月9日に視覚過敏の症状を持つ学生が、愛用していた緑色の紙を使ったノートが入手できなくなり困っている旨をツイートしたところ、株式会社ロフトや株式会社ハンズがTwitterで反応しました。
株式会社ロフトは6月10日にネットストアでの販売を決定した旨をツイートし、実際に14日からネットストアで、18日から順次全国の店頭でも販売されるように。
\ロフトで販売します!/
— ロフト公式 (@LOFT_Official) June 10, 2019
お悩みツイートを拝見し、確認を進めていました、光の反射をカットする目にやさしいノート #グリーンノート。まずはロフトネットストアにて、早ければ今週中より販売します!サイズもB5・A5・B6・B7・A7と豊富な展開。もう少々お待ち下さい。https://t.co/VwxAoeBAJg pic.twitter.com/fzDxlHKNNL
株式会社ハンズも、6月13日に全国の実店舗での販売を決定しました。
https://twitter.com/Hands_san/status/1139100805175267334
上記のツイートは約6,000件や16,000件に及ぶいいねを獲得し、両社への好意的なコメントがみられました。
SNS上の困りごとを拾い上げ、迅速に対応し、企業イメージの向上に成功した例です。
おわりに
ソーシャルリスニングとは、SNS上の投稿や会話を収集・分析し、企業活動に活用するマーケティング手法です。
従来のアンケート調査とは異なり、消費者の生の声や、リアルタイムな業界の動向を知ることができます。
ソーシャルリスニングはすぐに効果が出るものではないため、明確な目的を定めて長く腰を据えて行いましょう。
ソーシャルリスニングで得られた情報は、新しい商品のアイディアや、より消費者に刺さるプロモーション方法などのヒントになるでしょう。
(1*)総務省(2022)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nf308000.html#d0308130
(2*)導入事例|カゴメ株式会社様 | ソーシャルリスニングツール【ブームリサーチ】https://boomresearch.tribalmedia.co.jp/case/detail_01.html